令和8年 熊本地震での初期対応で行っていただきたい産業保健的対応について
この度、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
少しでも早い復旧と、皆様の安全と健康を心よりお祈り申し上げます。
日本はこれまで数多くの地震で被災してきましたが、今回の地震では真夏の暑い時期に発生しており、従来の震災時の対応に加えて温熱への対応も必要となっています。
現地では大きな混乱が予想されることから全体を俯瞰した対応が難しくなることも予想されるため、産業保健・健康管理の立場から情報を提供します。
今回の震災対応における現時点の最重要課題
※停電による熱中症リスク
停電により空調が停止するため、従来の震災対応に加え、常に熱中症対応を意識した行動が必要です。環境省熱中症予防情報サイトによると、本日29日〜31日の暑さ指数(WBGT)は、15時前後を中心に「30超え(危険)」と予測されています。現場の全人員が、現在は熱中症の危険状態にあることを強く意識して対応してください。
【最優先】熱中症リスクの高い対象者と確認ポイント
復旧対応にあたる現場では、以下の「高リスク者」を確実に把握し、継続的な体調確認を実施してください。
- 屋外の復旧・点検要員
設備点検、送電復旧、道路啓開、建物被害確認にあたる作業者作業強度が高く、装備(防護服等)により放熱が妨げられやすいため要注意です。
- 車中泊者
2016年の教訓(エコノミークラス症候群)に加え、今回は「車内の高温化」が直撃します。燃料不足や故障により、エアコンを維持できないリスクも想定してください。
- 避難所滞在者
人口密度の増加に伴い、室内の温度・湿度が急上昇するため注意が必要です。在宅の被災者自宅は無事だが停電している世帯(最も行政や支援の網から外れやすい)は注意しましょう。
- 高齢者・基礎疾患保有者
調節機能や口渇感が低下しているため、自覚症状が出た時点ですでに重症化している危険性があります。
作業者への熱中症対策の周知と、即時実施できる備え
(1)水分・塩分の補給とトイレの確保
- 水分摂取を絶対に控えない
断水でトイレが使えない状況でも、水分補給は絶対に制限しないでください。
- 安心して使えるトイレの確保
水分補給をためらわせないよう、簡易トイレや仮設トイレを最優先で確保します。
- 水分・塩分補給環境の整備
作業者がいつでも水分・塩分を摂取できる環境を現場に用意します。
(2)身体の冷却と休憩環境の確保
- 冷却できる避難場所の確保
作業の合間に身体を冷やせる環境(エアコンを稼働した車内など)を確保します。
- 停電下での冷却
休憩時は濡れタオルで身体を拭き、うちわや扇子で身体を冷やすことでも効果があります。
(3)組織での見守りと「早期アラート」の徹底
- 単独作業は原則禁止(複数人行動)
お互いの体調異変(会話の噛み合わなさ、足元のふらつき等)に気づけるよう、必ず複数人で行動します。
- 「災害だから」と我慢させない
「この状況だから仕方ない」と遠慮せず、少しでも異変を感じたら即座に報告・作業離脱するよう全員に徹底します。
- 緊急時手順の現場確認
熱中症の初期症状(めまい、立ちくらみ、大量の汗など)と、作業離脱・応急冷却・救急搬送の手順を現場で事前に確認します。
2025年6月改正の労働安全衛生規則に基づく職場対策は、災害時であっても厳守してください。
(4)バックグラウンド(私生活側)の把握
- 従業員の居住・被災状況の確認自宅の損壊、停電、車中泊の有無などを可能な限り把握します。
- 非就労時に十分な休養や身体の冷却ができているかは、翌日の熱中症リスクを大きく左右します。
参考)
産業医科大学産業生態科学研究所災害産業保健センター
令和8年(2026年)熊本地震 — 産業保健シリーズ
厚生労働省:職場における熱中症対策の強化について