乳房検査について

乳房検査の選び方

  1. マンモグラフィ検査・乳房超音波検査の特徴

    マンモグラフィ
    乳房超音波
    触ってもしこりがわからないようなタイプの乳がんも、白い点状の微細石灰化病変として見つけることができる 小さな病変やしこりの検出に優れている
    対策型がん検診(ある集団全体の死亡率を下げるための検診)として40歳以上の方の死亡率減少効果があると認められている 対策型がん検診として死亡率減少効果のデータが、現状では認められていない
    高濃度乳房では病変が見えにくい 高濃度乳房の影響を受けない
    40歳代以降の方に推奨 20~30歳代の方に推奨
    両方を併用することで単独受診よりがん発見率が上がる可能性がある。
    ただし、がんではない状況に対し要精密検査(偽陽性)となる頻度が上がることも考えられる。


    一般的には、20~30歳代では超音波検査中心、40歳代以降はマンモグラフィ検査中心が推奨されますが、年齢のみならず、ご自身の乳房の構成(高濃度乳房かどうか)、ご家族に乳がん経験者がいるかどうかや、過去の受診結果も参考に検査を選択されることをお勧めします。

  2. ブレスト・アウェアネス


    自分の乳房の状態に関心をもち、乳房を意識して生活することを「ブレスト・アウェアネス」といいます。この習慣は乳がんの早期発見・診断・治療につながる、女性にとって非常に重要な生活習慣です。 次の4つのポイントが重要とされています。

    ①自分の乳房の状態を知る 日常生活の中で自身の乳房の大きさ、硬さ、月経の周期に連動した変化などに気を付け、通常の状態を知っておきましょう。
    ②乳房の変化に気を付ける ・異常を探すという意識よりも、今までの生活では記憶にない変化を感じる、変化に気づくということが重要です。
    ・乳房のしこりの有無:乳がんではない良性の病変もしこりとして触れることがあります。気づいたら医師に相談しましょう。
    ・乳頭からの分泌物:乳頭付近の下着の汚れ(黒赤や褐色の分泌)があれば医師に相談しましょう。
    ・乳頭や乳輪のただれ・びらん:これらは皮膚の病気のほか、乳がんの早期症状のことがあります。
    ・乳房の皮膚の凹みや引きつれ:乳房の皮膚にくぼみや凹みがあることに気づいたら医師に相談しましょう。
    ・乳房の痛み:乳腺炎などの良性病変のこともありますが、医師に相談してみましょう。
    ③変化に気づいたら
    すぐに医師に相談する
    変化に気づいたら次回の検診を待ったり自己判断で先延ばしにしたりせずに、医療機関を受診しましょう。早めに受診することで適切な治療を早期に実施することができますし、病気でない場合の安心を感じることもできます。
    ④40歳になったら(少なくとも)
    2年に1回乳がん検診を受ける

    科学的根拠のある乳がん検診(マンモグラフィ)を受けるようにしましょう。マンモグラフィによる乳がん検診は乳がんで亡くなる人を減らす効果があることが科学的に証明されています。40歳代以上の方は、少なくとも2年に1回は乳がん検診を受けること、そして検診で異常を指摘された際には確実に精密検査を受けることが大切です。

 

乳房検査の結果について

  1. 乳房の構成
    乳房は乳腺組織と脂肪組織で構成されており、その割合や分布は個人によって異なります。 マンモグラフィでは、乳腺が白く、脂肪が黒く写ります。乳腺が多い乳房は白く濃く写ることから、白い部分が多いと、乳腺濃度が高い「高濃度乳房」と呼ばれます。乳腺濃度はマンモグラフィで判定され、乳房超音波検査で判定されることはありません。

  2. 高濃度乳房とは
    マンモグラフィ検査画像より乳腺濃度を「乳房の構成」として評価し、①脂肪性、②乳腺散在、③不均一高濃度、④極めて高濃度の4つに分類されます。このうち、乳腺の豊富な③不均一高濃度、④極めて高濃度の2つの分類を「高濃度乳房」と呼びます。 乳房の構成は、年齢や出産や授乳の経験、生活習慣などの影響に大きく左右されます。(以下写真参照)
    (画像引用:一般社団法人日本乳癌学会)

    脂肪性 乳房内はほぼ脂肪組織。マンモグラフィでは乳房全体がほぼ黒い。
    乳腺散在 脂肪組織の中に乳腺組織が散在している(脂肪組織が70~90%)。マンモグラフィでは、黒い部分と白い部分が混じっているが、黒い部分が多い。
    不均一高濃度 乳腺組織内に脂肪組織が混在し、不均一な濃度を呈する(乳腺内の脂肪組織が40~50%前後)。マンモグラフィでは、黒い部分と白い部分が混じっているが、白い部分が多い。
    極めて高濃度 乳腺組織内に脂肪組織の混在がほとんどない(乳腺内の脂肪組織が10~20%前後)。マンモグラフィでは乳房全体がほぼ真っ白である。白っぽい乳房では、病変は乳腺に隠れてやや見えにくくなります。


  3. 高濃度乳房と評価されたときは
    高濃度乳房は病気ではないため治療は必要ありません。また、必ずしも追加検査は必要ありません。定期的に自身の乳房の状態を確認し症状があれば放置せず病院(乳腺科)を受診ください。次回健診では、各検査法のメリット・デメリットをふまえて、超音波検査の併用を考慮するなど健診方法を選択してください。

  4. Q&A
日本人における高濃度乳房の割合はどのくらいですか。 高濃度乳房の割合は年齢によって変わります。全年齢を対象としたデータはまだありませんが、40 歳以上では約4割と推測されています。
もし高濃度乳房だったらどうしたらよいでしょうか。 高濃度乳房は乳房の構成を表す言葉であり、病気ではないため、原則として検査や治療の必要はありません。追加で検査を受けるなどの特別な対応が必要となるわけではありません。
高濃度乳房は、放置すると乳がんになるのでしょうか。 高濃度乳房であるからといって、将来必ずがんになるわけではありません。
高濃度乳房の場合、マンモグラフィでがんは全く見つからないのでしょうか。 高濃度乳房の場合であっても、マンモグラフィでがんを全く発見できないということではありません。
高濃度乳房の場合は、他の乳房の構成(脂肪性乳房や乳腺散在乳房)の場合と比べると、がんがあってもマンモグラフィで発見されない割合が高くなります。ただし、がんが全く検出できないということではありません。
一方で、どの乳房構成でも、また超音波検査や触診などどのような検査をおこなっても、100%乳がんを発見できるわけではありません。日常的に乳房の状態を意識し変化に気づくこと、そして変化がなくても定期的に検査を受けることが大切です。
乳房構成の評価や変化について教えてください。 年齢が若いほど高濃度乳房の割合が高い傾向にありますが、一方で、乳房構成はマンモグラフィの写真を目で見て評価されるもので、厳密に区別することが難しい場合もあります。そのため、乳がん検診を毎年受診している方が、ある年に乳腺散在乳房と分類され、翌年に不均一高濃度乳房と分類される、といったこともあります。
高濃度乳房はどんな人に多いのでしょうか。 加齢と共に乳腺は減少し、乳房の濃度は低下することから、年齢が高いほど高濃度乳房の割合が低いことがわかっています。40歳・50歳代で高く、60歳以上で低いという調査結果があります。
授乳をしたことのない人や女性ホルモン補充療法を受けている人は、高濃度乳房になりやすい傾向にあります。なお、乳房の大きさそのものと乳房の構成は関係ありません。
乳がん検診はどんな検査を受けたらいいでしょうか。 当会では、40歳未満の方には乳房超音波検査、40歳以上の方にはマンモグラフィ検査を推奨しています。
40歳代女性に対して、マンモグラフィに乳房超音波を追加することにより、乳がん発見率、早期乳がん発見率、感度が上昇するという調査結果があります。しかし、死亡率減少効果に関するデータがあるのはマンモグラフィだけなので、自治体の健康診断ではマンモグラフィのみが無料で受けられる検査として提供されている場合が多いです。
ご自身の職場や地域で受けられる検査を確認し、それぞれの検査のメリット・デメリットや、ご家族に乳がん経験者がいるかどうか、ご自身の過去の受診結果などをふまえたうえで、検査法を選択しましょう。

【参考資料】
厚生労働省「対策型乳がん検診における「高濃度乳房」問題の対応に関する報告書」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000158057.pdf
日本乳癌学会「高濃度乳房について」
https://www.jbcs.gr.jp/uploads/files/citizens/kounoudo_QA.pdf

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