バックナンバー
日本予防医学協会HP

いよいよ夏が近づいてきました。
今年の暑さはどうなるか不安もありますが、夏に向けて準備を進めていきましょう。

さて今月の【健康づくりかわら版】をお届けします!

 

お米について考える

 

6月は別名「水無月」。
水無月の由来は諸説ありますが、水の月(「無」は「の」を意味する)で、田んぼに水を引く月を意味するという説があります。
昨今、米不足が問題となり、令和の米騒動として様々な報道がされています。日本人に欠かせないお米についてこの機会に考えてみたいと思います。

そこで今回は『お米』に関するお話です。

田植えをする人
 

お米と日本の食料問題

 

日本は多くの食料を輸入していますが、島国であることから輸送距離が長く、フード・マイレージ(食料の輸送量に輸送距離を乗じた指標)が世界でも群を抜いて高い状況です。食料輸送に伴う燃料消費やCO2排出量が多いということは、地球環境に大きな負荷を与えていることを意味しています。
このフード・マイレージの削減には地産地消の促進が有効です。
日本人の主食であり、国内で自給可能なお米はフード・マイレージの観点からも重要な役割を果たします。

貨物船

また、日本のカロリーベースでの食料自給率は令和5年度で38%と主要先進国で最下位となっています。食料自給率が低いと、自然災害や国際情勢の悪化等で輸入ができなくなってしまったときに食料不足に陥ります。お米は万が一輸入が難しい状況に陥った場合でも調達できる食料です。

お米の一人あたりの年間消費量は、1962(昭和37)年度をピークに減少傾向となっています。
農家の方々にお米を作り続けてもらうには、お米の消費量を増やす必要があります。食事の多様化などお米の消費量が減った原因は多々ありますが、日本の食の未来のためにも、現在起こっているお米の問題について考えていかなければなりません。

 

「お米は太る」の誤解

 

「お米は炭水化物(糖質)が多い=太るから食べない」近年このように考える方も増えていますが、炭水化物は身体のエネルギー源として欠かせない栄養素です。

また、食後に急激に血糖値が上昇すると、インスリン(血糖値を下げるホルモン)が通常より多く分泌されるため、過剰に分泌されたインスリンの作用で体脂肪として蓄積されやすくなります。
お米に含まれる糖質であるでんぷん(多糖類)は、分解する過程を経て体内に取り入れられるため、果糖などの単糖類や砂糖などの少糖類に比べて消化吸収の速度は緩やかです。
そのため、お米は食後の血糖値の上昇スピードがゆっくりであり、体脂肪になりにくいというメリットがあります。

体重はエネルギーの摂取と消費のバランスが取れていない時に変動します。お米(糖質)を食べたから太るということでなく、摂取エネルギーが消費エネルギーより多ければ、体脂肪として蓄積されやすくなります。
お米は、塩分が含まれておらず、パンなど他の主食に比べて脂質が少ないというメリットもあります。
食べ過ぎには注意ですが、大事なのはお米を「食べない」ではなく、「どう食べるか」が重要なポイントです。


糖質については、過去のかわら版も参照ください。

2019年12月号“ラグビーW杯「桜の戦士」の“糖”魂精神を継承せよ!”
https://www.jpm1960.org/kawara/03/kawaraban201912.html


2021年10月号“食欲の秋!糖質は減らしすぎない!”
https://www.jpm1960.org/kawara/web202110.html

 

お米を食べるときのポイント

 

お米は、魚、肉、野菜などバラエティに富む組み合わせが可能であり、洋風・和風・中華など幅広い味付けにも対応してくれる懐深い日本の主食です。

「ご飯とみそ汁」
定番の組み合わせですが、お米に足りない栄養素であるたんぱく質(味噌・大豆)が一緒に摂れる最高のパートナーです。

なお、お米を食べるときは、「一汁三菜」を意識して献立を組み立てることがお勧めです。
日本食の基本の献立である一汁三菜は、お米(主食)をベースに、肉や魚、豆製品を主な材料とする主菜、みそ汁などの汁物、野菜、海藻、きのこ類などの副菜を揃えた栄養バランスに優れた献立です。食事の際には一汁三菜の定食スタイルを意識すると栄養バランスが整いやすくなります。

沢山のおかずを用意することが難しい時は具沢山の炊き込みご飯にしたり、忙しい時はおにぎりにして具を鮭などのたんぱく質がとれるものにしたりすることで、栄養バランスを整えることができます。また、玄米には食物繊維やビタミン、ミネラルなどの栄養素が精白米より多く含まれていますので、取り入れることもお勧めです。

お米だけでは足りない栄養素をおかずなどから上手に補ってみてくださいね。

 
一汁三菜
 

最後に・・・

 

蓮華の花畑に春の訪れを感じ、田んぼの水張りに夏が近いと知る。
青々とした稲と真夏の太陽。黄金色の稲穂の美しさと刈り入れ後の田んぼの寂しさに秋と冬が近いことを覚る。
幼少の頃を思い出すと、田んぼが四季を感じさせてくれました。
今、家の周りをみてみると、田んぼは住宅等に変わり、環境が大きく変わったと感じます。

今回の記事を書くにあたり、日本の食料の問題について考えることができました。
「いただきます」といえる幸せに感謝しながら、毎日の食事を楽しみたいと思います。

秋の稲穂
 

※今回の記事は次の資料を参考・引用して作成しました。
・農林水産省ホームページ お米についてまじめに考える。(最終閲覧日:2025年4月28日)
 https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/okome_majime/index.html

・農林水産省ホームページ お米と健康・食生活(最終閲覧日:2025年4月28日)
 https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/okome_majime/content/attach/pdf/health-1.pdf

・農林水産省ホームページ お米と食料安全保障(最終閲覧日:2025年4月28日)
 https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/okome_majime/content/attach/pdf/food-1.pdf

・農林水産省ホームページ お米と環境(最終閲覧日:2025年4月28日)
 https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/okome_majime/content/attach/pdf/environment-8.pdf

・農林水産省ホームページ 令和5年度食料自給率について(最終閲覧日:2025年4月28日)
 https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/attach/pdf/012-9.pdf

・農林水産省ホームページ 知ってる?日本の食糧事情(最終閲覧日:2025年4月28日)
 https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/index.html

・農林水産省ホームページ 「日本型食生活」のススメ(最終閲覧日:2025年4月28日)
 https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/nihon_gata.html

・国立国会図書館「日本の暦」(最終閲覧日:2025年4月28日)
 https://www.ndl.go.jp/koyomi/

 
 

PDF版はこちら【2025年6月】健康づくりかわら版をダウンロード

 

一般財団法人日本予防医学協会
HP https://www.jpm1960.org/
本メールマガジンに掲載された記事を許可なく転載することを禁じます。
Copyright (c) The Association for Preventive Medicine of Japan.
All rights reserved.