秋の夜長、ゆっくりした夜の時間をいかがお過ごしでしょうか。
日頃の疲れを癒すもよし、新しいことにチャレンジするもよし、有意義に活用していきましょう!
さて今月の【健康づくりかわら版】をお届けします!


食欲の秋!糖質は減らしすぎない!


近年、炭水化物を全く食べないという極端なダイエットが流行しています。『糖質制限で痩せた!』という経験をなさった方も少なからずいらっしゃると思います。

糖質でも脂質でも減らせば体重は減ります。しかし、糖質を制限すると、糖質だけでなく一緒に存在していた水分も失われて、数字上の体重が減ったように見えるのです。

短時間で一時的に体重が落ちますが、その後の糖の吸収が活発化するためリバウンドもしやすくなります。

そこで今回は、『糖との付き合い方』に関するお話です。


気を付けたい!摂りすぎ!摂らなすぎ!


糖質を摂取すると体内で代謝され、ブドウ糖に分解後、吸収されます。吸収されて血液中に入ったブドウ糖を「血糖」と呼び、その量を表す数値を「血糖値」といいます。 

■糖質を摂りすぎると…

エネルギーとして消費されなかった糖質が中性脂肪として蓄積され、肥満や生活習慣病の原因になると言われています。
糖質が多い食事をとると、血糖値が急激に上昇します。通常であれば、食後2~3時間もすれば食事前の血糖値に戻りますが、糖質を摂りすぎたり血糖値を急上昇させるような食べ方をすると、血糖値がうまく下がらなくなります。そして、この状態が長く続く と血管が傷ついて動脈硬化を引き起こし、糖尿病など様々な病気を発症する危険が高まります。

■糖質を摂らなすぎると…

エネルギーが不足して疲れやすくなります。また、糖質の不足分を補うためにタンパク質がエネルギー源として使われることで、筋肉量が減少し、かえって基礎代謝を低下させる原因にもなりかねません。
ブドウ糖は脳にとって最大のエネルギー源です。糖質が不足してブドウ糖が十分に届けられなくなると、脳の働きを妨げ、集中力の低下や最悪の場合には昏睡状態になるなどとても危険です。

※高血糖に関しましては「健康づくりかわら版」2019年11月号もご覧ください。
  “決して甘くはない、高血糖!”
URL: https://www.jpm1960.org/kawara/kawaraban/post-38.html


糖質の種類と吸収


糖質は種類によって構造が異なり、それによって吸収までの時間も様々です。食べてから糖質が吸収されるまでに時間がかかると、それだけ血糖値の上昇スピードは緩やかになります。

この血糖値の乱降下を抑えることが高血糖を始め、動脈硬化や糖尿病など様々な病気の予防に繋がります。

食事の際は吸収のスピードがゆっくりなものを選ぶようにしたり、先に食べるようにしましょう。

速い ←吸収のスピード→ ゆっくり
単糖類 少糖類 多糖類
穀類、果物、根菜類、はちみつ、
牛乳、ヨーグルト、トマトなど
砂糖、さとうきび、てんさい、牛乳、
母乳、麦芽、さつまいも、水あめなど
穀類、芋類、豆類、日本酒、味噌、
醤油、貝類、レバーなど

血糖値の上昇スピードを緩やかにするためには?


■穀類

主食は下記のような食品を選ぶようにしましょう。


ご飯→玄米、雑穀米、麦飯
パン→全粒粉パン、ライ麦パン

麺→そば、全粒粉パスタ


ご飯であれば白米に雑穀米ミックスやもち麦などを混ぜることからチャレンジしてみましょう。玄米や雑穀米が苦手な方は寒天パウダーを混ぜることでも食物繊維を摂ることが出来ます。


また、主食を豆や芋に代えるのもおすすめです。特に豆は、穀類に比べて食物繊維が多く、たんぱく質やミネラルも豊富なため糖質を控えたいときに主食の代わりに積極的に摂ると良いでしょう。

また、ラーメンとチャーハンなど炭水化物同士の組み合わせは急激に血糖値を上昇させるため注意が必要です。炭水化物の前に食物繊維が豊富な葉もの野菜を先に食べ、血糖値の上昇を緩やかにするようにしましょう。


日本人の食事摂取基準(2020)での1日に食事から摂取する栄養素のエネルギー比率は下記の通りです。
炭水化物:50~65% 脂質:20~30% たんぱく質:13~20%
【男性】1日の目安…ご飯3~4杯、食パン(6枚切り)5~7枚
【女性】1日の目安…ご飯2~3杯 、食パン(6枚切り)4~5枚
※18~69歳の運動量が低い~普通レベルの方の目安です。

■果物

<血糖値を上げやすい果物>

ぶどう、パイナップル、マンゴー、バナナ、柑橘類、柿など


<血糖値を上げにくい果物>
キウイ、りんご、なし、ベリー類など


ビタミンや食物繊維なども摂れる果物は間食にも最適です。血糖値を上げやすい果物は食後に食べるか、ヨーグルトなどと一緒に食べるよう心がけましょう。

■菓子類

砂糖は空腹時に摂取するとすぐに血糖値を上げます。砂糖入りのお菓子や飲料にはヨーグルトやチーズなどのタンパク質や脂質の多いナッツなどを組み合わせて食べるようにしましょう。血糖値の上昇スピードが緩やかになり腹持ちも良くなります。


1日の間食の目安である200kcalの例
菓子:クッキー4~5枚、板チョコ1/2枚、ショートケーキ1/2個
果物:キウイ5個(200kcal)、りんご1個(160kcal)

■飲料類

果物ジュースは果汁100%でも搾汁などの工程を経て食物繊維の含有量が減少しています。そのため、血糖値の上昇を緩やかにするという食物繊維本来の効果が十分に得られません。また、生の果実と比べて咀嚼・嚥下の手間がかからず飲み過ぎる傾向にあります。飲む前に量を決めておき、飲みすぎないように注意しましょう。選べるようであれば果皮や繊維の残るスムージーがオススメです。
さらに、果汁100%ではない清涼飲料水は甘味料が加えられているため注意が必要です。


最後に・・・


現状で糖質を摂りすぎている人はある程度減らす必要がありますが、極端な制限はリスクを伴います。
全く食べない!ではなく、食べる順番に気をつけたり、血糖値が緩やかに上昇する食品を選ぶようにするなどで、上手く糖と付き合っていきましょう!

※今回の記事は次の資料を引用・参考にして作成いたしました。

  • 厚生労働省 e-ヘルスネット 血糖値【2021年9月10日閲覧】
    https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-085.html
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット 炭水化物 / 糖質(たんすいかぶつ / とうしつ)由田克士【2021年9月10日閲覧】
    https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-018.html
  • 厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版)【2021年9月10日閲覧】

PDF版はこちら  【2021年10月】健康づくりかわら版.pdf をダウンロード


一般財団法人日本予防医学協会
HP https://www.jpm1960.org/
本メールマガジンに掲載された記事を許可なく転載することを禁じます。
Copyright (c) The Association for Preventive Medicine of Japan.
All rights reserved.