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今年も残すところあと1か月となりました。
12月5日は今年最後の満月、スーパームーンです。
いつもより大きく見える満月を楽しみながら、今年を振り返ってみてはいかがでしょうか。
さて今月の【健康づくりかわら版】をお届けします!

 

STOP the インフルエンザ!
~秘密はお口のケアにある~

 

今年は酷暑が続き、10月になっても半袖で過ごす日が多い異常気象でしたね。そんな中、11月頃から一気に気温が下がり、体調を崩されている方も多いのではないでしょうか。

気温差が大きい時期は、免疫力が低下しやすくインフルエンザの流行も始まります。
特に今年は全国的に昨年より1か月ほど早く流行が始まっていますが、予防の1つに「お口のケア(口腔ケア)」が効果的ということはご存じですか?

そこで今回は『インフルエンザ予防に効果的な口腔ケア』に関するお話です。

 

インフルエンザとは

 

インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染することによって起こる病気です。
口腔内やのどの粘膜が乾燥することで、ウイルスなどの侵入を防御する機能が弱まり、罹患しやすい状態になります。咳やくしゃみなどで飛沫したインフルエンザウイルスがのどの粘膜に付着することによって感染します。

罹患すると、38℃以上の発熱、全身症状(頭痛、関節痛、筋肉痛)風邪症状に似た、のどの痛み、鼻水、くしゃみなど、つらい症状が続きます。高齢者や持病がある方など、人によっては重症化することもあり、熱が下がっても、しばらくは体力の低下や倦怠感風邪症状などに悩まされます。

マスクをする人
 

口腔内細菌がインフルエンザウイルスを増殖させる!?

 

口腔内細菌が出す「ノイラミニダーゼ(NA)」という酵素を介してインフルエンザウイルスは増殖することがわかっています。不衛生な口腔内は、口腔内細菌が多くインフルエンザに罹患しやすい環境となります。つまり「口腔内を清潔にする=インフルエンザに罹りにくくする」ということなのです。

 

口腔ケアでウイルス対策!

 

~ウイルスの増殖を防ぐには「口腔ケア」が重要~
口腔ケアには自分で行う「セルフケア」と専門家による「プロケア」があります。
セルフケアとプロケアで、口腔内を清潔に保ちましょう。

1)自分で行う「セルフケア」 

  • 丁寧なブラッシング
    3~5分程度、鏡を見ながら丁寧に磨く。
    ※特に夜寝る前の歯磨きがポイント
ブラッシング
  • フロス(糸ようじ)や歯間ブラシでの歯間清掃
    歯と歯のすき間の汚れは、歯ブラシだけでは落とすことはできないため、フロスや歯間ブラシを使用して、しっかり歯と歯の間の汚れを落とす。
    ※歯間ブラシのサイズはかかりつけ医で確認してください
デンタルフロス
  • フッ素入り歯磨剤の使用
    歯磨剤は高濃度フッ素(1,450ppm)入りがおすすめ
    ※6歳以下のお子様は1,000ppm、年齢によって使用量をごく少量~少量で使用する
カップと歯ブラシ
  • 舌ブラシの使用
    舌ブラシは、奥から手前に向かって一方通行で使用する。
    ※舌を傷つけないように優しくあてるのがポイント
舌ブラシ

2)専門家による「プロケア」

  • 歯科医院での歯石除去やクリーニング
    数か月に1回は歯科医院で歯石除去やクリーニングがおすすめです。歯石除去や歯周ポケット内の清掃は自分では出来ないので、ぜひ、かかりつけ医での定期的な歯科受診を検討してみてください。
額帯鏡(がくたいきょう)

~お口の乾燥対策~
空気が乾燥すると、のどや鼻のバリア機能が低下し、インフルエンザにかかりやすくなります。口腔内の乾燥対策も、セルフケアの1つです。

1)適度な水分摂取を心がける

ペットボトルとグラス

2)唾液の分泌を促進させる

唾液にはお口の健康を守る多くの役割があり、自浄作用や抗菌作用などウイルスや細菌の侵入を防ぐ働きで体を守ってくれます。唾液腺のマッサージなどで唾液の分泌を促進させ、お口の乾燥対策をしましょう。

唾液で濡れている歯
 

口腔ケアで守ろう!大切な家族

 

~口腔ケアで高齢者のインフルエンザ発症リスクが10分の1に~

ある在宅療養高齢者を対象とした調査では、口腔ケアによってインフルエンザ発症リスクが10分の1に抑えられたと報告されています。その調査では口腔内の細菌数が減少したほか、インフルエンザウイルスの感染を助ける酵素である「ノイラミニダーゼ(NA)」などの活性が低下し、感染が抑えられたこともわかりました。

つまり、お口の中を清潔に保つことが感染の「入口対策」になるのです。

口腔ケアはインフルエンザに限らず、新型コロナウイルスや誤嚥性肺炎の予防にもつながります。

 

最後に・・・

 

インフルエンザに罹ると、「もう二度と罹りたくない!」と思うほどつらいものです。手洗い、うがい、十分な睡眠に加えて口腔ケアも感染対策の1つです。丁寧な歯磨きや歯間清掃は体全体を守ることにもつながります。
心も体も元気に新年を迎えられるよう、今年の冬は口腔ケアでインフルエンザ予防もぜひ意識してみてくださいね。【K】

歯と人のツーショット
 

※今回の記事は次の資料を参考・引用して作成しました。
・厚生労働省  
 【令和6年度】今シーズンのインフルエンザ総合対策
  https://www.mhlw.go.jp/stf/index2024.html(最終閲覧日:2025年11月11日)

・政府広報オンライン
 https://www.gov-online.go.jp/article/200909/entry-8422.html(最終閲覧日:2025年11月11日)

・日本歯科医師会
 WEBで学ぶ、歯と口の学校 歯の学校2025Vol.81
 https://www.jda.or.jp/hanogakko/vol81/number.html(最終閲覧日:2025年11月11日)

<参照>
・日本歯科医師会「インフルエンザ予防と歯周病菌」
・日本歯科医師会「口腔ケアで免疫力アップ」

・日本歯科医学学会誌[阿部修,奥田克爾ほか:
 日本歯科医学学会誌:25,27-33,2006.]
 健康な心と身体は口腔からー高齢者呼吸器感染予防の口腔ケアー

・公益社団法人日本小児歯科学会
 4学会合同のフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法
 https://www.jspd.or.jp/recommendation/article19/(最終閲覧日:2025年11月11日)

 
 

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