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ブレスト・アウェアネスを知っていますか? ~乳がんを知って早期発見に努めよう~

青い空を突き抜けるようなひまわりがとてもキレイな季節になりました。

暑い時期なのでしっかりと休息を取りながら、この夏も元気に過ごしていきましょう。


さて今月の【健康づくりかわら版】をお届けします!

 

ブレスト・アウェアネスを知っていますか?
~乳がんを知って早期発見に努めよう~

 

みなさんは、ブレスト・アウェアネス(乳房を意識する生活習慣)という言葉をご存じですか?
自分の乳房の状態に日ごろから関心を持ち、乳房を意識して生活することであり、乳がんの早期発見・診断・治療につながる、女性にとって非常に大切な生活習慣です。
がんは早期発見により治る可能性が高くなります。初期の場合は手術による身体的な負担も軽減されるため、その後の生活にも大きく影響することが考えられます。

そこで今回は『乳がんの早期発見』に関するお話です。

手を合わせる女性
 

まずは乳がんを知ろう

 

乳がんは、乳房にできる悪性腫瘍で、母乳を乳頭へ運ぶ管である「乳管」から発生することがほとんどです。日本女性が罹患するがんの第1位であり、女性のがん死亡率の中で第4位です。
好発年齢は40~60代ですが、20代後半から発症する方もいます。
男性の乳がんも稀ではありますが、年間700人前後の方が診断を受けています。乳がんの主な原因は、エストロゲンの長期暴露(初経年齢が早い、閉経年齢が遅い、出産歴がない、初産年齢が遅い、授乳歴がない)、飲酒習慣、閉経後の肥満、糖尿病、乳がんの家族歴などがいわれています。

 

ブレスト・アウェアネスのポイント

 

ここからは、ブレスト・アウェアネスのポイントを紹介します。
ぜひ日常生活に取り入れて実践してみてください。

※生理後、高体温期に入る前までに行う(閉経後は日や曜日などを決めて定期的に行う)

①乳房のセルフチェック

【見る】 

  • 鏡の前で、両方の乳房の形や皮膚の状態を見る
  • 乳頭周りを抑えて分泌物が出てこないかを見る

【触れる】 

  • 仰向けに寝て腕を上げ、乳房の内側、外側、脇の下を触れる
  • 入浴時に、腕を上げ、しこりのようなものが触れないかを調べる
  • 4本指をそろえて指の腹で10円玉大の「の」の字を書くように乳房全体をゆっくり触れる

ここでは自己触診について紹介していますが、手技が難しく煩雑で継続が難しい…という声もあります。
ブレスト・アウェアネスでは、入浴時や着替え、就寝前など日常的に乳房を見て・触れて・感じてみることが重要とされています。
入浴の際に石鹸をつけて撫で洗いする、着替えの時にちらっと左右を見比べてみるなど、できることからぜひ習慣づけていきましょう。

乳房のセルフチェック

②乳房の変化に気を付ける

気を付けるべき乳房の変化について知っておきましょう。

  • 分泌物…何かが出てくる、乳頭付近の下着が汚れる
  • びらん…乳房や乳頭周囲にただれや赤みがある、出血がある
  • 皮膚の凹みや引きつれ…凹みやくぼみ、形に左右差がある
  • 痛み…特に脇の下や乳房の外側上部の痛みが続く
  • 腫瘤(しゅりゅう)…しこりの様なものが触れる

③変化に気づいたらすぐ医師へ相談する

②で紹介した症状は、すべてが必ずがんであるという訳ではありません。ただし、精密検査や経過観察が必要な場合もあるため、「おかしいな…」と感じたら、自己判断はせずに一度専門医(乳腺外科)に相談しましょう。

④40歳になったら定期的に乳がん検診を受ける

日本では40歳以上の女性に対して、2年に1度のマンモグラフィによる乳がん検診が推奨されています。

《マンモグラフィ》

乳房を圧迫板で挟みⅩ線撮影する検査視診や触診では見つけにくい小さな病変を見つけることができ、乳がん所見に多い石灰化が写りやすいです。死亡率の減少効果が科学的に証明されている検査です。

検査に痛みを伴うことや高濃度乳房(※)では病変を見つけにくいといわれています。またⅩ線を使用するため妊娠中には配慮が必要です。

 

※高濃度乳房(デンスブレスト)とは
乳房内の乳腺の割合が多い状態のことで、日本人は40歳以上の約4割がデンスブレストといわれており、病気ではなく体質です。乳腺が多いためマンモグラフィでは全体的に白い塊のように写し出されます。
乳がんなどのがん細胞も白く写るので、デンスブレストの場合は、がんが見えにくい可能性があります。
このような場合、マンモグラフィと超音波検査を併用して行うことで、より精度の高い乳がん検診が可能となります。

 

 
マンモグラフィ

《乳房超音波検査》

乳房の表面に器機を当てて行うエコー検査。乳房内のしこりの有無を判断するのに有効で、高濃度乳腺でも病変を確認しやすいとされます。被ばくや痛みを伴わない検査です。

ただし、石灰化の確認が難しく、検査する人の技量に依存します。

 

 
乳房超音波検査

まずは定期的なマンモグラフィを行い、病変が見つかったときやデンスブレストで評価が難しいと判断された場合は超音波検査を追加することをおすすめします。人間ドックでは超音波検査を選択・追加できるため、気になる方は受診を検討してみてください。

20代から定期的に検診を受け、好発年齢である40代以降に向けて備えておくことが重要です。



下記URLの当会HPにて乳房検査に関する説明「乳房検査の選び方・乳房検査の結果について」もあわせてご覧くださいませ。

 

https://www.jpm1960.org/jushinsya/breast.html

 

 

 

最後に・・・

 

今回はブレスト・アウェアネスについてご紹介しましたが、みなさん実践できそうでしょうか?
乳房だけではなく、日ごろから自分自身のからだに関心を向け、ちょっとした変化に気づくことが大切です。定期的に検診を受診し、異常を感じた際にはためらわずに医療機関を受診しましょう。

産婦人科医 磯嶋

ピンクリボン
 

※今回の記事は次の資料を参考・引用して作成しました。


・公益財団法人 がん研究振興財団 がんの統計2024
 https://www.fpcr.or.jp/data_files/view/273/#toolbar=0&navpanes=0
 【最終閲覧2024年7月10日】

・日本乳癌学会 乳がん診療ガイドライン2022版②疫学・診断編
 https://jbcs.xsrv.jp/guideline/2022/e_index/
 【最終閲覧2024年7月9日】

・日本医師会 知っておきたいがん検診 
 https://www.med.or.jp/forest/gankenshin/type/breast/cause/
 【最終閲覧2024年7月9日】

・乳がん検診の適切な情報提供に関する研究 2019
 https://brestcs.org/information/self/
 【最終閲覧2024年7月8日】

・聖マリアンナ医科大学 乳がん検診における画像診断について
 https://www.marianna-u.ac.jp/breast/data/media/st-marianna/page/treatment/smm/smm12.pdf
 【最終閲覧2024年7月8日】

 
 

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