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11月8日の皆既月食、みなさま見ることができましたか?

師も走ると言われるくらいの忙しさの中でも、冬の澄んだ空気を感じ、星のきれいな冬の空を見上げる時間を作ってみませんか?

さて、今月の【健康づくりかわら版】をお届けします!

 

尿に関する気になる症状。密かに悩んでいませんか?

 

夜に何度もトイレで目が覚めてしまう、くしゃみをしたら漏れてしまう・・・

排尿に関する悩みは、加齢とともに増えていきます。

気にはなってはいるけれど、人に相談もしにくいため、そのままにしてしまっている。ということはありませんか?

そこで今回は『排尿トラブル』に関するお話です。

 

データで見てみると・・・

 

厚生労働省 令和元年国民生活基礎調査 によると・・・
下記の症状を訴える方は男女とも40代・50代以降になると増えていきます。
 尿の出る回数が多くなる:頻尿
 尿が出にくい・排尿時に痛みがある
 尿がもれる:尿失禁

 

症状で多いのは、男女ともに「頻尿」です。次に多いのが、男性は「尿が出にくい・排尿時に痛みがある」で、女性は「尿失禁」となっています。

 
症状を解説!
 

≪尿の出る回数が多くなる:頻尿≫
加齢に伴い、夜間の尿の生成をコントロールしているホルモンの分泌量が減ることで尿が多く作られてしまったり、膀胱の筋力低下や膀胱が小さくなり尿をためる力が弱くなることで起こります。
また、「過活動膀胱」や「前立腺肥大症」なども原因の1つです。
一般的には日中8回、夜間2回以上が頻尿と考えられていますが、それ以下であっても生活に支障があれば頻尿と言えると思います。

 

≪尿が出にくい・排尿時に痛みがある≫
尿の勢いが弱くなった、尿が出始めるまでに時間がかかるといった出にくさは、男性に多く「前立腺肥大症」が関係していると考えられています。
また、膀胱炎などの炎症が起きていると、排尿時に痛みを感じることも。女性は肛門の近くに尿道があることや、尿道の長さが短いことから、菌が入りやすく膀胱炎にかかりやすいと言われています。

 

≪尿がもれる:尿失禁≫
主に4つのタイプに分かれ、1と2の混合タイプもあります。

  1. 切迫性尿失禁
    強い尿意を感じ、トイレまで間に合わず漏れてしまう。
    頻尿を伴うことがあり、「過活動膀胱」が原因の1つとして考えられる。

  2. 腹圧性尿失禁
    重いものを持ったときやくしゃみをしたときなど、お腹に力が加わると尿が漏れる。女性に多く、妊娠や出産、女性ホルモンの変動等により、膀胱や子宮を支えている骨盤底筋群が緩むことで起きやすくなる。

  3. 溢流(いつりゅう)性尿失禁
    排尿後も膀胱の中に尿が残っているため、尿が溢れ出ることで起きる。男性特有の「前立腺肥大症」も原因の1つと考えられている。

  4. 機能性尿失禁
    歩行障害や認知症等でトイレに行くことができないなど、排尿にかかわる臓器や機能の障害以外が原因で起こる。
 
キーワードを解説!
 

「過活動膀胱」
膀胱に尿がちょっと溜まった状態で膀胱が活動し、尿意を感じてしまう。

 

過活動膀胱チェック
厚生労働省研究班監修 女性の健康推進教室 ヘルスケアラボ
https://w-health.jp/self_check/self_check_01/

 

「前立腺肥大症」
男性特有の臓器である前立腺が肥大してしまうことを指す。
尿道を取り巻くように膀胱のすぐ下に位置していることから、加齢とともに肥大すると、尿が出にくい、残尿感がある等の症状を引き起こす。

 

症状で困っているときは・・・

 

≪まずは受診≫
泌尿器科に受診・相談をしてみましょう。問診や診察・検査を受けることができます。
ちょっとした尿もれだからとそのままにしていたが、実は尿道や腎臓の病気が隠れているという可能性も。前立腺がんは前立腺肥大症と似た症状が現れることがあります。

 

受診の際には、症状や症状の起きる頻度、回数をメモしていくといいですね。お近くに泌尿器科がない場合にはかかりつけ医や、女性は婦人科等に相談してみることもよいかもしれません。

 

なお、治療方法は、疾患や症状によって異なります。
切迫性尿失禁や腹圧性尿失禁がある場合には、尿意を我慢する時間を延ばしていく「膀胱訓練」や、肛門をぎゅっと引き締める体操を行う「骨盤底筋訓練」を取り入れることも。

正しい治療につながるために、まずはしっかり受診!です。

 

≪生活の中で≫

・市販の尿もれパッドやライナー等をうまく活用しましょう。
 吸収できる量に合わせていろいろなパットが市販されています。
 汚れたらこまめに変えて陰部を清潔に!

・水分は少しずつこまめに摂取しましょう。
 症状を抑えたいという気持ちから、水分摂取を控えてしまうと脱水のリスクが高くなります。

 脱水や膀胱炎予防のためにも、こまめに少しずつ水分を摂りましょう!

・夕方や夜間のカフェインやお酒の摂取を控えましょう。
 カフェインやお酒には利尿作用があります。

 睡眠の質も下げてしまうので夕方や寝る前の摂取は控えるのが◎。

 

 

 

気になる症状はそのままにしないで

 

大事な会議中にトイレに行きたくなったら・・・
トイレに間に合わずに漏れてしまったら・・・
毎日気にしながら過ごすことは、心の負担にもなりますし、生活の質(QOL)も下がってしまいます。
受診する・相談する、この1歩で症状が改善したり、楽になることにつながるかもしれません。
症状の起きている原因は何かを知り、適切な治療ができるように気になる症状はそのままにしないようにしましょう。

 

【参考文献】
・「高齢者の排尿・排便障害」 須藤紀子 
 第54回日本老年医学学会学術集会記録 2012 日老医誌 p.582-585

・「日本人女性の尿失禁の実態とその取り組みに関する文献レビュー」
  喜多村定子・長弘千恵 徳島文理大学研究紀要 第95号 平成30.3 p.51-61

・厚生労働省研究班監修 女性の健康推進教室 ヘルスケアラボ (2022年11月21日最終閲覧)
 https://w-health.jp/

 

PDF版はこちら 【2022年12月】健康づくりかわら版.pdfをダウンロード

 

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