バックナンバー
日本予防医学協会HP
知っておきたい「甲状腺疾患」~首の小さな臓器が体全体を支えています~

本格的な夏がやってまいりました。

今年の夏はどんな楽しみが待っていますか?


さて今月の【健康づくりかわら版】をお届けします!

 

知っておきたい「甲状腺疾患」
~首の小さな臓器が体全体を支えています~

 

みなさんは「甲状腺」という臓器をご存じでしょうか。
甲状腺は首の前側、のどぼとけの少し下にある蝶が羽を広げたような形をした小さな臓器です。大きさはおおよそ4~5センチほどで、重さも20グラム前後しかありません。しかし、その小さな臓器が私たちの健康を保つうえで非常に重要な役割を担っています。

そこで今回は『甲状腺疾患』に関するお話です。

甲状腺
 

甲状腺の役割とは?

 

甲状腺から分泌される「甲状腺ホルモン」は、体のエネルギー消費や体温調節、脈拍、筋肉の働き、さらには脳や消化管の働きなど、全身のさまざまな機能を調整しています。例えるなら、体のエンジンの回転数を調節するアクセルのような役割を担っていると言えるでしょう。そのため、甲状腺の働きが強くなり過ぎても弱くなり過ぎても、首だけではなく全身にさまざまな症状が現れます。
また、甲状腺にはホルモンの異常だけでなく、しこりや腫瘍ができることもあります。甲状腺の病気は決して珍しいものではなく、特に女性に多いことが知られています。しかし、症状がゆっくり現れるため気付かれにくいことも少なくありません。

甲状腺ホルモン
 

甲状腺にはどんな病気があるの?

 

甲状腺の病気は、大きく分けると①ホルモンの異常②しこり(腫瘍)に分類されます。
ホルモンの異常で代表的な病気には、バセドウ病 と 橋本病 があります。バセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰になる病気で、一方、橋本病は甲状腺ホルモンが不足することがある病気です。
どちらも女性に多く、若い世代から中高年まで幅広い年代でみられます。
また、これらの病気は免疫の異常が関係していると考えられています。妊娠や出産をきっかけに見つかることもあり、年代を問わず注意が必要です。

甲状腺ホルモンが多くなると、

・動悸がする

・汗をかきやすい

・手が震える

・体重が減る

・疲れやすい

などの症状がみられます。逆にホルモンが不足すると、

・疲れやすい

・眠気が強い

・むくみやすい

・寒がりになる

・体重が増える

などの症状が現れます。「年齢のせいかな」と思っていた症状の原因が甲状腺であることも少なくありません。

甲状腺の病気の症状

次に甲状腺のしこりについてですが、近年、人間ドックや健康診断で超音波検査を受ける機会が増え、甲状腺のしこりが見つかる方も増えています。その多くは良性であり症状もないことが多いのです。
・首の腫れ
・首のしこり
・のどの違和感
などをきっかけに精密検査の対象となることがあります。甲状腺のしこりが見つかると、「癌ではないか」と不安になる方も少なくありません。しかし実際には、甲状腺のしこりの多くは良性です。必要以上に心配せず、まずは正確な診断を受けることが大切です。

 

検査と治療

 

ホルモン異常の病気に関しては、診断には血液検査を行います。
甲状腺ホルモンや甲状腺を調節するホルモンを測定することで、甲状腺の状態を評価します。また超音波検査を行い、甲状腺の大きさや炎症の有無を確認します。治療は、主に内服治療を行いますが、病状によっては放射性ヨウ素治療や手術を選択することもあります。適切な治療を受けることで、多くの方が通常の生活を送ることができます。しこりに関して、最も重要なのは超音波検査です。しこりの大きさや形、内部の状態などを詳しく観察し、必要に応じて細胞診という検査を行います。これは細い針で細胞を採取し、顕微鏡で細胞を調べる検査です。通常は採血で使う針と同程度の細い針を使用します。検査時間も短く、多くの方は問題なく受けることができます。また超音波検査は放射線を使わないため、体への負担が少なく、繰り返し行うことが可能です。
良性で症状がない場合は経過観察となることも多く、一方で悪性が疑われる場合や、大きくなって周囲を圧迫する場合には手術を検討します。甲状腺癌は比較的進行が遅いおとなしいタイプのものが多く、適切な治療により良好な経過が期待できます。

 
採血管
 

受診の目安

 

首のしこりや腫れ、声のかすれが続く場合は、一度医療機関で相談しましょう。また、動悸、手の震え、汗をかきやすい、急な体重変化、強い疲労感、眠気、寒がり、むくみなどが続く場合にも、甲状腺の異常が隠れていることがあります。特に首のしこりは、良性であることが多いものの、一度は専門医の診察を受け診断をつけることで治療方針が決まり、安心にもつながります。

医師
 

日常生活で気を付けること

 

甲状腺疾患の多くは生活習慣だけで予防できる病気ではありません。そのため、日頃から規則正しい生活を送り、十分な睡眠と適度な運動を心掛けることは全ての疾患の予防において大切ですが、「自分が悪かったから病気になった」と考える必要はありません。また治療中の方は症状がないからと自己判断で薬を中止せず、定期的な通院を続けましょう。また、インターネットやSNSには甲状腺疾患に関するさまざまな情報がありますが、中には医学的根拠の乏しい情報も含まれています。ヨウ素を多く含む食品を極端に避けたり、逆に過剰に摂取したりする必要がない場合もあります。気になることがあれば自己判断せず、専門医に相談するようにしましょう。

 

最後に・・・

 

甲状腺疾患は決して珍しい病気ではありません。そして、適切な検査と治療によって良好にコントロールできる病気がほとんどです。首のしこりや、原因不明の体調不良が続く場合は、一度医療機関へご相談ください。早期発見と適切な対応が健康を守る第一歩となります。

医師【K】

 

※今回の記事は次の資料を参考・引用して作成しました。

 

・日本甲状腺腫瘍診療ガイドライン2024

 https://jaes.umin.jp/info/files/guideline2024.pdf
・内田豊義 他(2018)『入門 甲状腺疾患』南山堂

 
 

PDF版はこちら【2026年7月】健康づくりかわら版をダウンロード

 

一般財団法人日本予防医学協会
HP https://www.jpm1960.org/
本メールマガジンに掲載された記事を許可なく転載することを禁じます。
Copyright (c) The Association for Preventive Medicine of Japan.
All rights reserved.