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いよいよ夏本番です。この時期は体力や食欲が落ちたり、寝苦しく睡眠の質が落ちてしまうなど、夏バテしやすい時期です。生活のリズムを整えながら、この夏も元気に乗り越えていきましょう。

さて今月の【健康づくりかわら版】をお届けします!

 

子宮頸がんのQ&A
 ~検診やワクチンで子宮頸がんを予防しよう~

 

みなさんはがん検診を定期的に受診していますか?
日本における死因の1位はがんで、約2人に1人はがんになるといわれています。
そこで今回は、検診による早期発見・治療で死亡率が低下すると証明されているがんの一つ『子宮頸がん』に関するお話です。

子宮頸がん
 

子宮頸がんとは

 

子宮は赤ちゃんを育てる子宮体部と、出産のときに産道の一部になる子宮頸部に分けられます。この子宮頸部に発生するがんを子宮頸がんといいます。日本では、毎年約1万人の女性が子宮頸がんにかかり、約3,000人の方が亡くなっています。

子宮体部と子宮頸部

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●なりやすい年齢は?

30~40代がピークで比較的若い世代に多いです。20代後半から増加し、50代以降の発症も少なくはありません。

●原因は?

①ヒトパピローマウイルス(HPV)
子宮頸がんは95%以上がHPVの長期間の感染が原因とされています。
HPVは性的な接触によって男性にも女性にも感染するウイルスで、性交渉の経験がある女性の50~80%が一生に一度は感染するといわれています。


②生活習慣
子宮頸がん発症の要因として、喫煙や飲酒、肥満も挙げられています。生活習慣の見直しも子宮頸がんの予防には重要であるといえます。

●HPVに感染したら?

HPVに感染した場合、多くは2年以内に自然治癒し、問題ないことがほとんどです。一方で、感染が長期間持続し、自然治癒しなかった一部の方が『異形成』と呼ばれる前がん病変を経て、数年~数十年かけて子宮頸がんへ進行すると考えられています。

異形成やがんのごく初期で発見できれば、早期治療で完治する可能性が高く、手術による身体の負担も軽減されます。その場合、妊娠・出産も望めますし、手術による合併症も少ないため、その後の生活に大きく影響することが考えられます。

 

子宮頸がん検診で早期発見

 

現在、一般的に行われる子宮頸がん検診は『細胞診』ですが、日本の子宮頸がん検診受診率は約30%であり、欧米諸国が70~80%であることと比較するとまだまだ少ないといえます。

検査を待つ女性

●検診の頻度は?

現在、厚生労働省により20歳代では2年に1回の細胞診、30歳以上では2年に1回の細胞診または5年に1回のHPV検査(※)が推奨されています。しかし、これは異常がなかった場合であり、一度でも異常を指摘された場合は産婦人科医の指示に従って受診してください。

●痛みはある?

性交渉の経験がない方は、検査に痛みを伴うことがありますが、使用する器具のサイズの調整や潤滑剤の使用で痛みを軽減できます。検診を受けることでそのほかの婦人科疾患を発見できる場合もあります。特に月経不順や不正出血、持続する下腹部痛など気になる症状がある際は、一度、産婦人科への相談をお勧めします。

●何歳まで受けたらいいの?

厚生労働省の指針では、『特に受診を推奨するのは20歳以上69歳以下』とされています。これは、70歳を超えると子宮頸がんにならないという意味ではありません。20歳から69歳まで2年に1回の検診を受け続けて異常がなかった場合、70歳から10年間はほぼ子宮頸がんは発症しない、ということに基づいたものです。
69歳までに検診の受診歴が長期間ない方については、子宮頸がんのリスクがあるので、上記の年齢を超えても受診することが望ましいでしょう。

※HPV検査について
HPVの種類は100種類以上存在していますが、がんと関係のあるハイリスクタイプ(約15種類)に感染しているかどうか、また、感染しているハイリスクHPVの型が何かを検査します。
細胞診の際に採取した同じ細胞を利用して検査(同時実施)も可能です。
検査感度が高く、定期健診として導入している自治体もあります。

 

HPVワクチンでの予防

 

現在、日本で接種されているHPVワクチンは2価、4価、9価の3種類があり、これは予防できるHPVの数を表しています。
最近では、予防できるHPVの数が多い9価の接種が推奨されており、9価ワクチンにより8~9割の子宮頸がんが予防可能といわれています。

注射器

●いつ受ければいいの?

12~16歳の女子は、予防接種法に基づく定期接種として、公費によりHPVワクチンを接種することができます。
26歳までに接種をすると、前がん病変の発生が減少することもわかっており、早期接種が望ましいとされています。

●効果はどのくらい?

12~16歳にワクチン接種すると、26~30歳まではワクチンの効果が持続すると考えられています。接種後は抗体が低下するものの、一定の値を保ち、性交渉により自然感染した場合よりも高い抗体を維持することがわかっています。

●男性も受けることができるの?

日本では9歳以上の男性が4価のHPVワクチンを接種できます。
男性が接種することにより、子宮頸がんの予防だけでなく、中咽頭がんや肛門がんなどにかかるリスクも減少することが示されています。多くの欧米諸国では公費で接種可能で、接種率80%を超える地域もあり、HPVの感染や前がん病変の発生が低下しています。

一方、日本では、男性への接種が定期接種でないため、費用は接種者の全額負担がほとんどであり、接種が進まないのが現状です。

●副作用は大丈夫?

国内でHPVワクチン接種の副作用が疑われたことから接種が控えられた時期がありました。現在は、世界保健機関(WHO)や厚生労働省の調査からも、HPVワクチンの安全性に特段の問題はないとされています。

ワクチン接種と検診を組み合わせることで、より効果的な子宮頸がんの予防が期待できます。今後、接種を迷っている方は、お近くの産婦人科へご相談ください。

 

最後に・・・

 

子宮頸がんはワクチン接種で発症を予防でき、検診で前がん病変を早期発見することでがんへの進行を防ぐことができます。日々忙しい生活の中でも自分自身のからだに関心をもって、定期的な検診と適切な医療機関の受診を行いましょう。

婦人科医【Y・I】

医師と女性
 

※参考文献
・日本産科婦人科学会 産科・婦人科の病気 子宮頸がん
 https://www.jsog.or.jp/citizen/5713/
 【最終閲覧2025年6月8日】
・日本産科婦人科学会 子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために
 https://www.jsog.or.jp/citizen/5765/
 【最終閲覧2025年6月8日】
・東京都保健医療局 40代、50代、60代の方へ知ってほしい子宮頸がん検診の大切さ
 https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/joshikenkobu/column/03/
 【最終閲覧2025年6月9日】
・日本婦人科腫瘍学会 HPVワクチンについてQ&A
 https://jsgo.or.jp/hpvqa/
 【最終閲覧2025年6月9日】
・東京都保健医療局 HPVワクチンの男性への接種について
 https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kansen/info/hpv/hpvdansei
 【最終閲覧2025年6月9日】

 
 

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