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春風が心地よい季節となりました。新たに芽吹く命や桜の花からのエールを胸に、新しいスタートを切りたいですね。
皆様の決意や挑戦が素晴らしい結果につながりますように。

さて今月の【健康づくりかわら版】をお届けします!

 

春の眠気にサヨナラ! 食事でできる春眠対策

 

厳しい冬が終わり春のぽかぽか陽気を迎えた時季に、寝ても寝ても眠気を感じやすくなる方も多いのではないでしょうか。
「春眠暁を覚えず」これは単なる気のせいではなく、春特有のさまざまな要因が絡み合っており、食事の影響も大きいようです。

そこで今回は『睡眠の質を高める食習慣』に関するお話です。

寝ている羊
 

春に眠気を感じる要因は?

 

春に眠気を感じやすくなるのは、以下のような要因が重なっているといわれています。

 

①気温・気圧・湿度の変化
気温や気圧、湿度の変化に身体が適応しようとエネルギーを使うため、疲労が蓄積したり、切り替えがうまくいかず自律神経が乱れやすくなります。


②環境の変化
新年度・新学期・新生活など、慣れない環境による疲れやストレスが睡眠の質を低下させる原因となります。


③日照時間の変化
春は日が長くなり、一時的に日照時間の変化についていけず、体内時計が乱れやすくなります。これにより、眠りのリズムが乱れることがあります。


④花粉症の影響
花粉症による鼻づまりや目のかゆみなどが、快適な睡眠を妨げる原因になったり、アレルギー反応自体が身体に負担をかけ、疲労感が蓄積されやすくなります。

眠気を放置すると、集中力や免疫力の低下、イライラが増えるなど、日常生活や仕事のパフォーマンスに大きな影響を及ぼす可能性があります。
うまく眠れていないと感じている方は、ぜひ、食生活の改善で睡眠の質を上げてみませんか?

 

睡眠の質を上げる食習慣

 

1日3食、バランスの良い食事を摂ることを基本として、次のことを意識してみてくださいね。

①食事は就寝の約2時間前までに
就寝する直前の食事は、胃腸の消化吸収のため睡眠の質が低下してしまいます。胃腸の消化が落ち着く時間を目安に、就寝の約2時間前までに済ませておきたいですね。
残業などで遅い時間に食事を摂る場合は、19時頃に補食(おにぎりなど)を加え、夕食は脂質が多く消化に時間のかかる食事は避けると◎。

【胃の滞留時間の目安】
≪2時間≫
 お粥・パン・大根・ほうれん草・りんご・バナナ・半熟卵

≪2.5時間≫
 お米・そば・じゃがいも・たまねぎ・人参・生卵

≪3時間≫
 うどん・かぼちゃ・さつまいも・煮魚・卵焼き・こんにゃく

≪3.5時間≫
 牛肉・貝類・焼き魚・えび・ゆで卵

≪4~5時間≫
 豚肉・ハム・ベーコン・天ぷら・うなぎ

≪7時間以上≫
 バター・脂の多い加工食品・乳製品類・スナック菓子類

※食品の種類や量によっても滞留時間は各々異なります。

スナック菓子を食べるナマケモノ

②夕方以降のカフェインは控えめに
カフェインの摂取量は1日400mg(コーヒー:マグカップ約2杯)を超えると、夜眠りにくくなる可能性があり、とくに夕方以降の摂取は、夜間の睡眠に影響しやすいといわれています。

コーヒーや紅茶、緑茶などカフェインを含む飲み物は15時くらいまで、それ以降はノンカフェインの飲み物に切り替えると◎。
水、麦茶、黒豆茶、コーン茶、その他カフェインを含まないハーブティーなどへの置き換えを検討してみてくださいね。

デスクワークをする女性

③アルコールは適度に
アルコールは一時的に睡眠を促進してくれます。しかし、睡眠後半の眠りの質は悪化し、飲酒量の増加と共に中途覚醒の回数が増加することが報告されています。
晩酌は1合を目安に、寝酒をしないよう意識してみてください。

お酒

④睡眠の質を上げる栄養素(メラトニンやトリプトファン、マグネシウム、ビタミンB6など)を意識して取り入れる。

 <おすすめの食品>
  バナナ、卵、大豆製品、魚(鮭、鯖等)、キノコ、玄米、
  ほうれん草、オートミール、枝豆、ヨーグルト など

マグネシウムを含む食品
ビタミンB6を含む食品
 

睡眠休養感を意識してみる

 

睡眠の質を高めるためには、十分な睡眠時間の確保が重要ですが、それと同じくらい大切なのが、よく眠れた感覚(=睡眠休養感)があるかということです。
睡眠休養感を低下させる要因としては、就寝直前の夕食や夜食のほか、仕事などによる日中のストレス、朝食抜きなどの食習慣の乱れ、運動不足、さらに糖尿病、高血圧、がん、うつ病などの慢性疾患を有することなども報告されています。

起きた時に「よく眠れた感覚があるか」を意識し、足りないようであれば、睡眠環境、生活習慣、嗜好品の摂り方なども見直し、今できることから改善に取り組んでいきましょう。

また、日頃から慢性疾患の早期発見・早期治療に努め、睡眠の質を高められるよう努めることが大切です。

こちらも参考に
Good Sleepガイド(ぐっすりガイド)成人版(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/001288005.pdf

立っているナマケモノ
 

最後に・・・

 

私たちの身体は、日々の食事や小さな習慣の積み重ねによってつくられています。
春風を追い風に、今日から踏み出す小さな一歩が皆様の素晴らしい日々につながることを願っています。

 

※今回の記事は次の資料を参考・引用して作成しました。
・厚生労働省ウェブサイト 睡眠対策

 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/suimin/index.html

 (最終閲覧日:2025年3月7日)
・厚生労働省ウェブサイト e-健康づくりネット 良い目覚めは良い眠りから 知っているようで知らない睡眠のこと
 http://e-kennet.mhlw.go.jp/wp/wp-content/themes/targis_mhlw/pdf/leaf-sleep.pdf?1741350807084

 (最終閲覧日:2025年3月7日)
・厚生労働省ウェブサイト e-ヘルスネット【情報提供】メラトニン
 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-062.html
 (最終閲覧日:2025年3月7日)
・山下光雄(1990)『明治時代の文献にみる調理科学(4)食品の調理形態と胃内停留時間』 23巻3号 p242-253

 
 

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