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あなたにとっての「〇〇の秋」は、どんな時間でしょうか?
「食欲の秋」「スポーツの秋」「読書の秋」「芸術の秋」など様々なテーマがあり、多様な楽しみ方がある秋ならではの時間を思う存分満喫したいですね。

さて今月の【健康づくりかわら版】をお届けします!

 

季節の変わり目“だるぅ”の正体

 

やっと夏の暑さが過ぎ去り、過ごしやすい行楽シーズンを迎えたはずなのに、なんだかやる気が出ない、憂鬱な気分になる等“怠さ”を感じていませんか?ここ数年、気象病という言葉をよく耳にするようになりました。
私たちの健康状態は、食事や運動、睡眠など、日々の生活習慣に大きく影響されますが、実は“天気”も健康状態を左右する重要な要因の一つと言えます。
特に気圧や気温の変化を繰り返す春や秋など季節の変わり目には、自律神経が乱高下することで疲弊しやすく、体内の環境を一定に保つ力が弱くなり様々な心身の不調を引き起こします。

そこで今回は『自律神経の整え方』に関するお話です。

パソコンを使用する女性
 

秋冬は、気分が落ち込みやすくなる?!

 

秋冬は日照時間が短くなることにより脳内の神経伝達物質のひとつであるセロトニンの分泌が減少します。セロトニンは、気分や感情の調節に関与しており、不足すると、うつ病、不眠、過食、慢性的なストレスや疲労感、めまい、頭痛、便秘などの症状が現れることがあります。

秋から冬にかけて憂うつな気分になる「秋バテ」「冬季うつ」などと呼ばれる季節性感情障害は、春頃には自然と症状が改善するため、自分がこの病気であると気づいていない場合もあるようです。

感情面が不安定になりやすい秋を元気に過ごすには、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの分泌量を増やすことが重要です。
セロトニンには、自律神経のバランスを調整する働きを高める作用があり、自律神経が整うとセロトニンの分泌量が増えるという、好循環がうまれ、徐々に不調を感じにくくなります。

 

幸福度をアップさせる秋の過ごし方

 

生活リズムを整えることや、規則的に食事をとること、食事をよく噛んで食べること、散歩やダンスなどの運動をすること、テンポが一定の音楽(ロックなど)を聴くことなど、リズムを刻む行動は、セロトニン分泌を促します。

その他にも次の行動は、セロトニンの増加が期待できます。

  • 十分な睡眠時間を確保し、良質な睡眠を心掛ける

  • 朝や昼に外に出て日光をあびる時間を増やす

  • トリプトファンを多く含む食材をとる
    (肉、魚、卵、大豆製品、乳製品、ナッツ類、穀類など)

  • 腸内環境を整える
    (加工食品を控え、発酵食品や食物繊維を多く摂る)

  • ストレッチや首周りを温めるなどして血行を促進する

  • 呼吸が浅くならないよう背筋を伸ばし正しい姿勢で過ごす

  • 口腔ケアを徹底し、口腔内を清潔に保つ

  • 意識的に口角をあげ、にっこり微笑む

  • 家族や友人との時間を大切にする

  • (感動する映画などで)涙を流す

  • 余裕をもって計画を立て、早めの大掃除をはじめる
セロトニン
 

“なんとなく不調”は、自律神経からのSOS

 

私たちは、自律神経という自動操縦モードのおかげで日々快適に生きていられるわけですが、自律神経は働きすぎると疲弊します。心拍数や血圧、呼吸、消化、排泄、代謝、免疫、体温調節など、生命維持にかかわるさまざまな機能を調整するために休むことなく働いてくれています。

自律神経には2種類あり、交感神経はアクセルの役割、副交感神経はブレーキの役割などと表現されます。

交感神経と副交感神経のバランスは、必ずどちらか一方が優位になるわけではなく、両方の働きが高い、または低い傾向にある場合もあります。
交感神経と副交感神経の働きが、同じくらいか、副交感神経がやや優位くらいのバランスがよく、なおかつ、どちらもが高い状態にあると不調を寄せ付けない最高の状態といえます。

アクセルだけ、ブレーキだけの車を想像してみてください。
安全運転のためには、アクセルとブレーキの両方がそれぞれ必要に応じてしっかり機能することが大切ですね。体調のコントロールにも同じことがいえます。

 

天気や時間帯にあわせて行動を変えてみよう

 

天気が心や体にもたらす不調は数えきれないほどありますが、それらすべてを総称して「気象病」と呼んでいます。

さまざまな疾患や痛みの根本的な原因は、血流障害にあります。
血流をよくするには、状況に合わせて自律神経の働きをサポートすることが大切です。
また、自律神経がしっかり働けるように、日々の生活リズムを整えておくことで、台風や急な天気の変化がある日も体調を崩すことなく快適に過ごせるようになります。

【晴れの日】:交感神経が優位になりやすい。
 心穏やかに過ごし、リラックスすることを意識するとよい。
 ・イライラや焦りを感じたら深呼吸をする
 ・時間に余裕を持ち、意識的にゆっくり行動する

晴

【くもり&雨の日】:副交感神経が優位になりやすい。
 楽しみながら活動的に動くことを意識するとよい。
 ・背筋を伸ばし、いつもよりリズミカルに歩く
 ・明るい色の服や小物を身に着け、気分をあげる

曇り・雨

【朝】:副交感神経から交感神経へバトンタッチ!
 交感神経のスイッチをONにする行動を意識するとよい。
 ・ベットの上でストレッチ(朝日を浴びるとなお◎)
 ・コップ1杯の水または白湯を飲む

水道から出る水

【日中】:交感神経優位の活動モード!
 体をリラックスさせる行動を意識するとよい。
 ・30分~1時間に1回は体を動かす
 ・こまめに水を飲む

交感神経と副交感神経

【夜】:副交感神経の働きを高め、質の良い睡眠への準備を!
 ゆったりとした気持ちで過ごすことを意識すると良い。
 ・39~40度のぬるめのお湯で10~15分入浴
 ・徐々に部屋を暗くし、スマホなどは見ない

交感神経と副交感神経
 

最後に・・・

 

アクセルを踏みすぎていることに気が付いたらブレーキを踏む。
ブレーキが利きすぎていることに気が付いたらアクセルを踏む。

自分のアクセルとブレーキが、どんな行動なのか知っておくと徐々に体調をコントロールするコツがつかめてきます。
意識すると良いポイントをたくさん紹介しましたが、これができたら良い、これができていないから悪い、ではなく、自分に優しいコントロール方法をみつけてほしいと思います。

美しい景色や美味しい食材に恵まれた秋。行きたいところも、食べたいものも、やりたいことも盛りだくさんで毎年、あっという間に通り過ぎてしまう秋。
日々のちょっとした自律神経への心遣いで、心身とも健やかに充実した秋を過ごせますように。

喜ぶ二人
 

※今回の記事は次の資料を参考・引用して作成しました。

 

・小林弘幸、小越久美『天気に負けないカラダ大全』株式会社 サンマーク出版、2023
・小林弘幸『眠れなくなるほど面白い 図解 自律神経の話』日本文芸社、2020
・大久保愛『1週間に1つずつ体がバテない食薬習慣』株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン、2021
・増田美加『気象病を治したい!病院での治療と日常生活ですぐできること【増田美加のドクタートークVol.71】』
・堀江昭佳『血流がすべて解決する』株式会社サンマーク出版、2016

 
 

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