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休み明けに気をつけたい、社会的時差ぼけ!?

実りの秋が近づいてきましたね!
サンマや栗、柿など、美味しいものが目白押しで、早くもわくわくしています。皆さまも秋に向けて、思いを巡らせつつ、残暑を乗り越えましょう!
さて今月の【健康づくりかわら版】をお届けします!

 

休み明けに気をつけたい、社会的時差ぼけ!?

 

休日にゆっくり休んだはずなのに、休み明けに体がだるい、気分が落ち込む、という経験がありませんか?その原因は、ソーシャルジェットラグ(社会的時差ぼけ)かもしれません。特に、連休明けには、そのような悩みを抱えていらっしゃる方が多くみられます。

そこで今月は、『ソーシャルジェットラグ』に関するお話です。

考える女性
 

ソーシャルジェットラグとは・・・

 

ソーシャルジェットラグとは、ドイツの時間生物学者Roenneberg(ローエンバーグ)らが2006年に提唱した概念で、平日と休日の睡眠時間に差が生じることによる生活リズムの乱れで、心身の不調をきたすことを言います。

1日は24時間周期ですが、体内には脳と各内臓に周期の異なる複数の時計(体内時計)が存在するため、太陽の光や食事で日々リセットする必要があります。しかし、睡眠時間に差が生じることで、リセットが上手くできず、生活リズムが乱れていきます。

平日の睡眠不足を取り戻そうとして、休日に「寝だめ」をする人は少なくありませんが、このような習慣で、実際には眠りを「ためる」ことはできません。1)

そして、このような生活は、肥満や糖尿病などの生活習慣病、脳血管障害や心血管系疾患、うつ病の発症リスクとなることが報告されています。1)

最近では、交代勤務者だけでなく、日勤者においても休日と平日の睡眠時間帯が異なることでソーシャルジェットラグが起こると言われているため、誰しもが注意する必要があります。

 

 ソーシャルジェットラグの要因 2)

 

外的要因

交代勤務や長時間通勤、政府が昨年から施行している夏季の朝型勤務(欧米のサマータイムに類似)などの外的要因に起因する場合が多いです。

実際、国内の働く世代の30%以上は6時間以下の短時間睡眠者であり、睡眠時間が圧縮される原因の多くは長時間労働や通勤事情など社会時刻上の制約によります。

内的要因

生まれつきロングスリーパーの方やクロノタイプなど内的要因(体質)でソーシャルジェットラグが生じることも少なくありません。

成人の約30%を占める夜型の強いクロノタイプはソーシャルジェットラグの代表的なハイリスク要因です。

 

 

 

クロノタイプとは・・・

 

クロノタイプとは、いわゆる朝型・夜型のことであり、成人の約10%が強い夜型、約20%が夜型を示し、約40%が中間型、30%弱が朝型です。3)
約50%が遺伝的に決定されると言われていますが、年齢が上がるにつれて朝型傾向になるなど、年齢や性別、社会的制約や環境により変化します。4)

また、睡眠習慣に強く影響し、就寝時刻・起床時刻は朝型、中間型、夜型の順に遅くなります。3)そのため、夜型では朝型もしくは中間型に比べて睡眠時間が短くなり、平日に不足した睡眠時間を補うために寝だめをすることで体内時計が乱れやすくなります。

自分のクロノタイプは朝型夜型質問紙により診断できます。
興味のある方はチェックしてみてください。

朝型夜型質問紙
https://www.sleepmed.jp/q/meq/meq_form.php

 

時差ぼけチェック

 

平日と休日の就寝・起床時刻を書き出してみましょう。
中央時刻の差がソーシャルジェットラグとなります。

例えば…
平日:1時就寝・7時起床 休日:2時就寝・10時起床

この場合、平日の中央時刻は4時、休日の中央時刻は6時のため、ソーシャルジェットラグは2時間です。

メモを取る
 

これで時差ぼけ解消!

 

①平日に数十分ずつ早寝、もしくは早起きをする

例えば、休日に2~3時間遅く起床する人は、平日の5日間は毎日20~30分ずつ早起きをする

いざ早く寝ようと思ってもなかなか寝付けないので、早起きの方を心掛けるとよい

 
ベッドで目覚める男性

②休日の朝も平日と同じ時間に起きて、日中に昼寝をする

昼寝は、夜の睡眠に影響を与えないよう、昼食後から午後3時の間で15分~30分以内にする

 
昼寝をする女性

③日中に太陽光を浴びる

太陽光を浴びることで体内時計がリセットされ、夜に眠気をもたらすメラトニンというホルモンの分泌が促されます

 
カーテンを開く女性
 

最後に・・・

 

せっかく楽しんだ休日も、その後に体調を崩してしまうと、もったいないですよね。楽しむ時は楽しむ!休む時は休む!メリハリをつけて仕事もプライベートも充実させましょう!【I】

外出する女性
 

※今回の記事は次の資料を参考・引用して作成しました。


・1)健康づくりのための睡眠ガイド2023 RECOMMENDATION1 成人版

・2)三島和夫『睡眠関連障害と全身性疾患をめぐって 3)社会的ジェットラグがもたらす健康リスク』、2016、日本内科学会雑誌105巻9号

・3)三島和夫『社会的ジェットラグと睡眠』、2019、学術の動向

・4)早田敦子、内匠透『4.概日リズムとクロノタイプと気分障害にかかわるストレスレジリエンス』、2021、日本生物学的精神医学雑誌 32巻4号(2021)/Japanese Journal of Biological Psychiatry Vol.32,No.4

 
 

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