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朝晩と涼しくなり、秋らしい過ごしやすい季節になってきました。

この時期ならではの「○○な秋」を楽しみたいですね。

さて今月の【健康づくりかわら版】をお届けします!

 

「自分はできる!」と信じる力

 

“明日から毎日10,000歩以上歩く”と心に決めて実行することは誰にとっても難しいことではないでしょうか。

でも、これが“毎日3000歩程度”からであればなんとなくできるような気がします。

今回はこの『なんとなく自分にもできそうな感じ』について心理学の視点からのお話です。

 

自分はできる!=『自己効力感』

 

「自分ならできる」「きっとうまくいく」と思える感情を、カナダの心理学者アルバート・バンデューラは『自己効力感(self-efficacy)』と呼びました。
自己効力感が高い人は「よし、やるぞ!」と前向きに行動を起こすことができる反面、自己効力感が低い人は「自分には無理だ」「私にはできない」と後ろ向きに考えてしまい行動を起こすことが難しくなってしまいます。
つまり、自己効力感は前向きな行動を引き起こすためのこころのエネルギーといえるでしょう。

 

自己効力感を高めるポイント

 

バンデューラは、自己効力感を高めるための4つのポイントをあげています。

〇達成経験
バンデューラがもっとも重要視したのが達成経験です。
自分で行動した結果、達成できた、成功したという経験の積み重ねが自信につながり、自己効力感を高めていきます。

〇代理経験
自分の達成経験だけではなく、他者が達成したことやそのプロセスを観察して、自分にもできそうだと感じることです。
そこから自分の達成や成功をイメージすることで自己効力感が高まっていきます。

〇言語的説得
自分には能力があると周囲から説明をされたり、励まされる体験を得ることで、自分にもできるのではないかという感覚が養われ、自己効力感が高まることにつながっていきます。

〇生理的情緒的高揚
苦手で難しいと感じている状況を克服できた体験は、苦手意識を克服するだけではなく、達成経験をより強いものとして感じることができます。

自己効力感をエネルギーにして行動した結果、達成や成功した経験を積み重ねることで自己肯定感も高まり、相乗効果も期待できます。
また、自己効力感を高めることは、中長期的な視点で能力開発や生産性の向上にもつながっていきます。

 

自己効力感が低いと。。。

 

誰もが、能力や経験をもっています。しかし、何かしらの理由で達成や成功をしたという感覚を得ることができない状況に陥ってしまい、自己効力感が低くなったとしましょう。
そうすると、「どうせやってもできない」「自分にはできない」「やっても無駄」という後ろ向きな気持ちに支配され、積極的な行動を起こすことが難しくなります。
行動を起こさないと、新たな経験を積み重ねていく機会にも恵まれず、もともとの能力や経験を活かすことができないという悪循環に陥ってしまいます。
この悪循環が、本人にとっても、組織にとっても大きな損失をもたらしてしまうことは容易に想像できますね。

 

組織として自己効力感を高める方法

 
  1. スモールステップで「できた」と感じることができる機会を作り続ける

  2. 少し上の先輩の成功体験をモデリングできる機会や状況を作り「自分にもできそうだ」という感覚を得やすいようにする
  3. これまでにできたことをフィードバックする機会を増やし「できるはずだ」と思ってもらえるように働きかける
  4. 苦手なことに向き合わなければならない状況でこそ、いつも通りを意識させることで、「意外と大丈夫」と思えるように働きかける

自己効力感が高まりやすい人もいれば、下がりやすい人、一喜一憂して安定しない人、体調や生活状況の影響を受けやすい人などその特徴は異なります。

同じサポートをしていたとしても、成果を感じるまでに時間を要してしまうこともあるでしょう。

すでに自己効力感がとても低い状態になってしまっている人は、「どうして失敗したんだ」「周りはできるのに自分にはできない」など後ろ向きな気持ちになってしまいます。

そういった場合には、組織全体でフォローし合い、「自分のことを理解してもらえる」という感覚を共有できるようになるといいですね。

 

最後に・・・

 

男子バスケットワールドカップ2023で、48年ぶりに自力でのオリンピック出場権を日本代表が手に入れましたね。トム・ホーバス日本代表ヘッド・コーチは、選手たちに「Believe!」とよく声を掛けていたそうです。

「信じるチカラ」ですね。

過酷なトレーニングを積み重ねてきて、少しずつよい結果を積み重ねてきたからこそ、選手個々人としてもチームとしても効力感が高まったのだろうと想像しています。

 

私も代理達成の効果を得てバスケットをしたくなってきました。

臨床心理士・公認心理師 HT

 

※今回の記事は次の資料を参考に作成しました。
『面白いほどよくわかる!心理学』 渋谷昌三 西東社 2017

 
 

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