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いわし雲、うろこ雲、ひつじ雲。秋はいろんな雲を見ることができます。夜は中秋の名月も。空を見上げる時間作りませんか?

さて、今月の【健康づくりかわら版】をお届けします!

 

マッスルパワーは、健康パワー

 

立つ・座る、歩く・走る、心臓を動かす、内臓を動かす。生きていくために必要不可欠な筋肉。筋肉もケアをしていかないと、20歳前後をピークに加齢に伴い急激に減少していきます。筋肉量の低下は生活習慣病や介護のリスクにつながることも・・・

そこで今月は『筋肉と健康』に関するお話です。

 

筋肉とパワーの関係性について

 

筋肉には主に3種類あります。


骨格筋

自分の意志で動かすことができる。

腹筋や背筋、腕や脚の筋肉など骨格に沿って分布し身体の活動を支えている。


平滑筋

自律神経に支配されており意志で動かすことはできない。

血管や胃・腸などの内壁にある筋肉。


心筋

心臓にある筋肉で構造は骨格筋と似ているが、自分の意志で動かすことはできない。

心臓を動かし続けるポンプの役割を担っている。

この中で、立つ・座る・歩く・動くなど日常生活に大きな影響を与えている筋肉が「骨格筋」。一般的に筋肉と呼び、筋トレなどで鍛えることができる筋肉です。この筋肉が発揮するパワーにも実は2つあります。筋肉が1回の収縮で発揮する力「筋力」と、筋肉が繰り返し収縮し続ける能力である「筋持久力」です。
そのパワーを作り出す筋繊維についても見てみましょう。

・速筋(白筋)

筋力は高い。持久性は低く疲労しやすい。

レジスタンス運動(筋トレ)により筋繊維が一部破断することでいわゆる筋肉痛が起きる。その後2~3日で修復すると少し太くなる。これを繰り返すことで筋の断面積が全体として太くなり筋力UP。

 

・遅筋(赤筋) 

筋力は低いが持久性が高く、疲労に対する耐性も高い。

軽い負荷の有酸素性運動を繰り返し続けることで、筋線維周りの毛細血管が発達し酸素供給力が高まり持久力UP。

 

 

筋肉×健康パワー

 

サルコペニアという言葉をご存じですか?
加齢に伴い筋肉量が減少していく現象のことです。25~30歳頃から進行が始まり生涯を通して進行します。歩くスピードが遅くなったり、立ち上がることが億劫に感じるなど活動能力の低下が起き、転倒や介護の要因となります。

また、筋肉はエネルギー代謝や糖・脂質の代謝にも大きく関与しています。
基礎代謝量とは安静時に生命を維持するために消費されるエネルギー量のこと。基礎代謝量で最もエネルギー消費をしているのは臓器の次に骨格筋です。
筋肉量が増えれば基礎代謝量も増える、筋肉量が減れば基礎代謝量も減っていきます。さらに活動や運動量が少ないと、消費エネルギーも少なくなり筋肉も減少していってしまうという悪循環に。
消費エネルギーの減少は、肥満の要因となり、将来的に動脈硬化や生活習慣病のリスクを高めます。

一方、筋肉を動かすと前述したパワーを作り出すときや活動後の身体の回復のために、糖や脂質を使います。また、血圧低下にも効果があることが分かっており、筋肉を動かすことは生活習慣病予防改善に効果があるのです。
筋肉を動かし、筋肉量を増やす、そしてまた筋肉を動かす。
このことが介護予防や生活習慣病予防に大きく寄与し、健康寿命の延伸にもつながっていきます。

そして、朗報です!
筋肉は運動と栄養によって年齢に関係なく強く大きく鍛えることができるのです!!(・∀・)_Π」

 

マッスルケアを始めよう

 

加齢による筋肉量の変化について「減少率が最も大きいのは下肢で、次に全身、上肢、体幹部の順(※1)」という報告があります。
身体の中で一番大きい筋肉は太ももの大腿四頭筋です。
そのため、下半身の筋肉を中心に筋力UPに取り組みましょう。

また、筋力と筋持久力どちらも大切なパワー。
筋トレと有酸素運動を組み合わせると◎。
日によって筋トレと有酸素運動を取り入れたり、同じトレーニングの中でスピードや重さを変えたりすることで、鍛えるパワーを変えることもできます。負荷を軽く回数を多くすることで筋持久UP、負荷を強くあと2回できるかできないかという回数のトレーニングで筋力UPという感じです。
なお、トレーニングの際は、正しいフォームで水分補給をしながら実施しましょう。

もちろん生活の中でもトレーニングは可能。
階段の上り下り、歯磨きしながらのスクワットや踵の上げ下げ、通勤時の1駅歩きや速歩き、自転車利用など。
少しの工夫で運動タイムが作れます!無理なくできることから始めてみませんか?職場体操などもオススメです。

さらに、栄養補給も重要なポイント!身体がエネルギー不足になっていると、筋肉を分解してエネルギーを産生することになり、ますます筋肉が減ってしまうことも。筋肉を作るためのタンパク質やビタミン・ミネラル、エネルギー源の糖質など、毎日の食事バランスも整えましょう。

 

最後に・・・

 

座っている時間が多くなった現代。筋肉量の減少がもたらす健康リスクが危惧されています。

段差などでつまづいたときにパッと足がでなければ、横断歩道を時間内に渡ることができなければ、肥満や血糖値、血圧、脂質のコントロールが悪ければ・・・

将来どういう状況が起こるのか、想像してみてください。

日々の積み重ねが、その一歩が、力となり未来を変えます。
食事・運動・睡眠。1つ1つを大切にして、健康パワーを増やしていきましょう。

 
 

※今回の記事は次の資料を引用・参考にして作成しました。


【厚生労働省 e-ヘルスネット】 最終閲覧:2023年8月23日
・QOLの維持・向上に大切な筋肉は? 谷本 道哉
 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-04-002.html
・筋力・筋持久力
 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-092.html
・サルコペニア
 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-087.html
・加齢とエネルギー代謝 大河原一憲
 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-02-004.html
・身体活動とエネルギー代謝 大河原一憲
 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-02-003.html

※1 谷本芳美他 「日本人筋肉量の加齢による特徴」2010 日本老年医学会雑誌47巻1号 p.52-57  

 
 

PDF版はこちら 【2023年9月】健康づくりかわら版.pdfをダウンロード

 

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